なぜ、イスラエル企業を欲しがるのか?(2) - 'How Strategic Innovation'

February 1, 2015

「アップル、グーグル、マイクロソフトはなぜ、イスラエル企業を欲しがるのか?」を読了した。

全体を通してイスラエルを絶賛している論調は少々危険に感じたが、イノベーションを計画的に巻き起こす仕組みや制度、風習が事例を交えながら記載されていた。

読み終えたのでまとめ。

アップル、グーグル、マイクロソフトはなぜ、イスラエル企業を欲しがるのか?
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動機の重要性

イスラエルには他国と違う長期的な目的を達成するための動機がある。

母国が無かった彼らにとってコミュニティへの貢献・コミュニティの構築と醸成はもっとも重要な動機付けであるようだ。

ビジョナリーカンパニーでは根源的な目的が必要とある。 イスラエルには、他にないものがひとつある、楽になっても利益があっても忘れられないもの…それは動機だ。 ドバイの動機は利益でありコミュニティーを構築しようとする動機はない。 だからドバイは困難や安全が脅かされるとコミュニティーを作ろうとする使命感のない人たちは一目散に逃げ出してしまう。

総じて感じたことは、すべての源は動機であり目指している目標からくるのだろうということだった。

歴史とその政治情勢から、他国とは国民の持つ動機やモチベーションが根本的に異なっている。歯に衣着せない物言いやフラットな議論と議論好きな体質、徹底的に追求していく姿勢、物事に対して柔軟な姿勢・・・そういった活力はいったいどこから来るのかと読み進める中終始感じていたのだが、動機の違いがここまではっきりと文化として現れるものなのか。

依存

一方で、イスラエルの経済的・地理的な問題も浮き彫りにされている。

イスラエルは実際は世界的ベンチャーキャピタルに、輸出に依存している。 ベンチャーキャピタルも投資家のポートフォリオ3-5%から捻出される軍資金がベースなので縮小されることもある

イスラエルについてほとんど知らないで読み進めていたせいもあるが、正直そこまで外資に依存しているとは思わなかった。政情が不安になれば当然資金も引きあげることもあるだろうし、その緊張感とスリルは、想像に難くない。

兵役免除の弊害

アラブ系イスラエル人にはイェハーラーという働かない、兵役もやらない人種がいる。

純正統派というらしい。これがイスラエル経済の足を引っ張っているそうだ。 昔は数百人とかだったらしいが今は何万人もいるらしい。 かたや世界のイノベーションの中心にある国にありながらこういう社会問題も抱えていて、 イスラエルという国は何事も両極端な国のように思える。

小さな国ではあるが、一枚岩ではないんだな。そして移民難民がなだれ込んで来て、その人達の雇用も創出せねばならんとは。課題は山積しているのだろうと感じられる。・・・自分の住む世界のなんとぬるま湯なことか。

アイデアはイノベーションの始まりにすぎない

もし、アイデアがイノベーションの核心だとすればひとりあたりの特許件数で世界の上位にいるどの国でも –韓国、フィンランドそしてイスラエルも含めて–、 それとほぼ同数のスタートアップ企業があってもおかしくないはずだ。 (中略) イスラエルにはふたつの本質的な構成要素、つまりミッション中心の意識と、 リスクを背負う必要性を受け入れる文化とがあるように思われる。 このふたつこそが、政策立案者や経営者に目を向けるようにと我々が働きかけているテーマなのだ。 (中略) 大半のスタートアップは失敗する。それはイスラエル国内であっても、シリコンバレーでも同じことだ。 だから、イノベーションについての疑問は、 どこからこのリスクに臨む決意や受け入れる意識が生まれてくるのか、という問いかけになる。

この一節がこの本のすべてを物語っているかもしれない。

イスラエルにはリスクを背負う必要性を受け入れる文化があるということだ。若者が就職したり大学院に進学するのと同列で起業することが一般的なこととして認知されている、そういう文化がある。そういった性質が出来るか否かは、その国の成り立ちに左右されるということか。

そして他国にはイスラエルのような生き方のマネはできないだろうが、そのイスラエルのあり方から、イノベーションを戦略的に生み出すヒントを見つけ出すことは出来るのではないか。というのがこの本の提言なわけだ。



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