腱鞘炎から逃げ切るための知見

January 21, 2025

愛用していたロジクール g300s/g300sr がしばらく前に廃盤となり、確保していた予備機もほどなく壊れ、いよいよ追い詰められ彷徨ううち入力デバイス選びや使い方の最適解がわかってきたのでまとめます。

原因、問題点、命題

腱鞘炎になりやすい原因

  • 手首が反っている
  • 手や指に力が入っている
  • 特定の部位(手や指)に負荷がかかっている

これらのいずれかまたは複数が長時間続くと腱鞘炎になる。

一方で、入力デバイスなので腱鞘炎対策と同時に考慮すべき別の問題がある。

  • マウス:正確なポインティング
  • キーボード:タイピングのしやすさ、入力の速さ

つまり、「腱鞘炎を対策しながら同時に入力デバイスとしての効率も損なわない選択」が求められる。

特定の製品が自分に合うということももちろんだが、冒頭に書いた通りいずれ廃盤するかもしれないし、予備を用意していてもいずれそれも壊れる。 なので、具体的な製品の選定というよりは選定観点や体の使い方などのメタをまとめたい。

キーボード・マウス共通の観点

前述の通り次のことを意識する必要がある。

  • 手首が反っていないか
  • 手や指に無駄な力が入っていないか
  • 特定の部位に極端に負荷がかかっていないか

これらの確認は新たにデバイスを買わなくてもすぐできる。 余計な力の入らない運指や握り方を習得すればお金をかけずに対策が可能とも言えるが、限界はあるので注意。

あとは定期的に休憩を挟むこと。座りすぎや立ちっぱなしは腰にも良くないので。

キーボード

キーボードの腱鞘炎対策として気をつける点は以下

  1. 手首の反り
  2. 指の先・指の腹で底をついてしまう
  3. ミスタイプ

特に指に力が入ったり底を打つのが続くと突き指・ばね指になるので注意。

1.の対策は

  • リストレストで手首の反りを抑える
  • 薄く平べったいキーボードを検討する

2.の対策は

  • キーストロークが深めのキーボードを選択する
  • ロープロファイルを選び、深く打ちすぎないようにする
  • ノートPC本体のキーボードを使うまたは薄いキーボードを使う場合は、打つというより触るようにタイピングする

3.の対策は

  • 押下圧を調整する
  • キーボードレイアウトを変える(US/JP、Qwerty/Dvorak/親指シフト、etc)
  • できるだけ丈夫で長く使えるものを選び、デバイスに慣れる

薄いキーボードやノートPCのキーボードの場合はストロークが非常に浅いため、油断すると無意識に強く叩いてしまうなど、普通に使っていても指で底をつくリスクがある。尊師スタイルの場合も反りが気になるならリストレストはあったほうがいいかもしれない。 8cm四方の小さいリストレストを使うと14inchでもmagic trackpadを挟んで違和感なく置けるが、持ち物が増えることやmagic trackpadが高さで1cmほど遠くなってしまう点などが人によっては気になる要素。

押下圧は軽ければ軽いほど流れるようにタイプできるが、軽くしすぎるとミスタイプを誘発しやすい。ミスタイプが多いとそれだけタイプ数が増えて効率も落ちる。この辺の相性は店舗へ出向くなりレンタルなりで現物を触って確認したほうがいい。 流行りの自作キーボードも一興。キーボードはものによっては10年以上使えたりするので投資としては案外悪くない。

マウス・ポインティングデバイス

マウス・ポインティングデバイスでの腱鞘炎対策として気をつける点は以下

  1. 強く握ってしまう、手首を起点に動かしてしまう
  2. 遠くにカーソルを動かすとき一度浮かせて息継ぎしてしまう
  3. 特定の部位にだけ強い負担がかかっている

1.の対策は

  • できるだけ軽いものを選ぶ
  • ぴったり手に合うまたは少し小さめのものを選ぶ

2.の対策は

  • DPI等の極端に低いものを避ける
  • OS等の設定で調整する

3.の対策は

  • エルゴノミクスマウスの場合はクリック時カーソルが動かないかつ手首の負担にならないような形状・サイズを選ぶ
  • magic trackpadの場合はクリックを押し込みではなくタップにする、人差し指や中指で動かすと手首を反らせ指を持ち上げる時間が必要になるので、リストレストを使うか親指で動かす
  • トラックボールの場合は指関節は動かさずに手のひらを動かす感じで操作し指関節の負担を減らす
  • thinkpadの赤ポッチの場合は人差し指に特に負担がかかりやすいので中指と交互に使うか、キーボードショートカットを利用率を増やす、触る時間が長くならないようにする
  • ほか全般的に、特定の製品の特定の形状に最適化されすぎないようにする

マウスで最も重要なのは重量、軽いほどよい。重量の目安は100g以下で、有線無線で少し違いというか注意点がある(後述)。

手首は動かさず、カーソルを大きく移動させるときは加速度を活かして肘か前腕を素早くかつ少し動かし、精密動作時は手のひらの中で複数の指でマウスを動かし位置を決めるイメージ。 指先の繊細な動きでカーソルの位置を定めるほうが負担は少ない、したがってやや小さめなほうが位置の微調整はしやすくなる。

有線無線問題は無線のほうがデスクがスッキリするが、乾電池ないし充電池の重量がマウス本体の重量に加算されることになるので、個人的には有線一択。ケーブルの煩わしさはマウスバンジーを使えば解消する。 カタログスペック上のマウスの重量も、有線の場合はケーブルの重さが乗っておりバンジー等によりスペックより体感で15gほど更に軽くなる。逆に無線の場合はそのカタログ上の重量表記に電池が含まれるのか含まれないのか製品によりまちまちなので注意。

重量に次いで大切なのが入手容易性ないし形状の凡庸性。というのもマウスはキーボードに比べ圧倒的に壊れやすく、早ければ1年程度でオシャカになる。床に落とすと一発で壊れることもザラ。 したがってデスクワーク用途ならある程度廉価で乗り換えやすさの担保のために奇抜な形状でもなく、かつ最低限のスペックが確保されたものが望ましい。 幸いゲーミングマウスを除けば軽量と低価格は相関性が高く選択肢は多め。

マウス設定はコツがあるので整理すると、

  • DPI、解像度、リフレッシュレート等:高いほどよい、そしてできるだけ高くする
  • OSのカーソル移動速度:DPI等が高ければそれほど早くしなくて良いはず、楽に画面端に動かせる程度まで下げてよい
  • OSのカーソル加速度:加速度を抑えてリニアにするほうが指と目の感覚に近くなる。が、バシっと狙ったところになかなか動かせない人は加速度を増やすことで調整

DPIが低いと狙ったところにカーソルを持っていこうとしても(モニターのリフレッシュレートにもよるが)カーソルがグラグラと揺れて見えたり軌跡がスムーズでなく狙いをつけづらい。 一方で加速度を増やしすぎると精密動作時極端にマウスカーソルが重たく感じてしまい無理なく動かせる可動範囲を超えて手首や指に力が入ってしまう。 したがって加速度は控えめにして、精密動作時のカーソルのブレは高DPIなデバイスを採用することでカバーしたい。 DPIの目安としては体感2000以上あれば概ね問題ないように思う。最低でも1500程度はほしい。それ以下だと素早いカーソル移動をDPIではなくカーソル移動速度に頼ることになり、ブレが目立つようになる。

エルゴノミクスマウス(握手するように持つ、縦型のマウス)は前述の通りクリック時にカースルがズレやすく、それを防ぐために大きめで重くなりがち。そうすると精密動作も前述した複数の指で繊細にタッチ…ではなく手首主体で位置決めすることになるので負担になりやすい。加速度強めなカーソルが好きならエルゴマウスは合うかもしれない(私は合わなかった)。

おまけ:現在の環境

  • キーボード:HHKB type-s JP
  • マウス:サンワサプライ MA-BL165BK

最近は左手用マウスもだいぶ選択肢が増えました。ありがたい。



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